#007 巴

    文様・意匠

    巴紋といえば神社

    太鼓の紋や神社の紋 でよくあるのが「巴」の紋です。3つ巴と2つ巴がよく目にします。日本の地図記号でお寺マークといえば卍(まんじ)で神社マークといえば鳥居ですが、巴は神社の紋で非常によく使われているので鳥居が地図マークにならなければ巴が採用された可能性もあります。

    模様の意味の読み方

    渦巻き模様は、意味があると思って眺めようとすると、例えば「ラーメンのなると」「鳴門海峡の渦巻き」といった最初に思い出すものでの解読になりがちです。ただ、渦やらせんの模様というのは海でも川でも貝でも竜巻でも台風でも蛇でもウンコでも銀河系でも、自然界のあちこちにできていまう形なので、●▽□などと同様にプリミティブな表現の1つと考えるほうがよいと思います。

    どこにでも見られるカタチなので、縄文土器のような文字の記録がない時代のものにも「うず」の文様は発見することができます。C字型な勾玉は縄文の遺跡からも出土する古くから日本列島にある形ですが、これも渦(うず)的なカタチと見ることもできます。

    巴文様の起源を探る

    これは自然界の「渦模様」から生まれたものと見ることができます。ただ、単純なカタチだけに解釈は色々可能で、勾玉を並べた説もありますし、うずまきを蛇のとぐろに結び付けてそれの抽象化とみることもできます。

    巴紋は神社でよくみられるという話を最初にしましたが、勾玉ととらえた場合は、勾玉は古事記でも天岩戸神話の中で小道具として登場しますし、蛇も神社の神様は例えば三輪山の神様などはご神体=蛇だったりする伝説もあるので、どちらの解釈をしても神社にゆかりの深いキーワードではありますので、巴紋が神社でよく採用されたのは自然な流れだったのではないかと思います。あるいは、水の渦の形象化したものが巴紋ととっても、海の恵みをつかさどるような神社に相性がよさそうです。

    八幡神社の紋

    日本で一番多い神社は八幡神社と言われていますが、これは八幡製鉄所などがある北九州出身の神さまが、奈良の大仏ができた時代に「仏教を手伝ってやるよ」と関西にやってきて、その後源氏の氏神となり、全国に広まった神社です。こちらの八幡さまは八幡大菩薩という神仏として信仰されてましたが、巴紋はこの八幡さまをまつる神社でもよく採用されています。八幡大菩薩は弓矢神のイメージになるせいもあってか、巴紋は平安時代以前の弓具である鞆(とも)から発展したカタチという解説がされることもあります。

    由来話と雅楽

    カタチの由来的な話は正確さを期すと「諸説あります」しか言えないことが多いので物事に1つの起源を求める視点だとつまらないところもあるのですが、逆に言うと色んな解釈ができるので自由度が高いというおもしろさもあります。

    ところで、雅楽の鼉太鼓(だだいこ)、屋外演奏で使われる大きな太鼓で面白いのが、3つ巴の太鼓と2つ巴で左右一対になっていて、右近の橘、左近の桜、口を開けた狛犬と口を閉じた狛犬、狛犬と獅子、みたいに左右不均衡の美を作っていることです。このあたりは左右対象にしないでバランスをとる美学の1つとして見ることもできます。

    では、今回は「巴(ともえ)紋」のお話でした。

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