鳥居以外で神社をシンボルマークにするとしたら、どう描きますか?とう質問をすると、だいたい屋根にXが乗ってるみたいなものを書くことになるのではないでしょうか?
お城の天守閣にはしゃちほこという幻獣がのっていますが、伊勢神宮や出雲大社などのお宮の上には、千木(ちぎ)というものがのっていて、神社建築の大きな特徴になっています。
垂直ライン(そとそぎ)になっているのが「男神系」で、水平ライン(うちそぎ)になっているのが「女神系」というのが一般的によくいわれれます。伊勢の外宮が垂直(そとそぎ)で、伊勢の内宮は水平(うちそぎ)です。
屋根飾りだと鰹木(かつおぎ)というのもあります。これは、屋根の上におさえ的に乗っているものです。この数が奇数だと男性で偶数だと女性という場合分けもよくいわれます。
神社が建物を建てだしたのは仏教建築が入ってきて以降の話なのですが、千木も鰹木も古い時代の日本建築を復古的に装飾として取り入れたもののようです。伊勢神宮の神明造や出雲大社の大社造りは仏教伝来以前の古い建築から発展した様式と考えられています。
千木が垂直化水平化での判別、鰹木が奇数か偶数かでの判別、はよくあるルールですが、必ずしも全国の神社建築をこのルールで分析できるかというとそうでもないです。
江戸時代は全国の神社の宗家(そうけ)あるいは家元的な存在だった京都の吉田神社には、 斎場所大元宮(さいじょうしょだいげんぐうといって「根源の神様を祭っていて、全国の神様がここにあつまってますので、ここにお参りすれば全国巡礼に等しい利益がある」的なお宮があります。
ここの千木は、手前は水平の千木で、奥は垂直の千木になっていました。これは狛犬のように左右不対象の美を好む感覚から生まれたものというより、女神も男神も「全部乗せ」のシンボルではないかと思われるところです。
追記
この千木の話、最初に聞いた時は実はあまり興味なかったのですが、絵やビジュアルデザインへの興味が強くなってから、面白さを感じるようになりました。垂直に線を引くか水平に線を引くかでビジュアルの印象ってだいぶ変わるからです。
たてしまの福を切るのか、横島の服を着るのかで同じボーダーのTシャツでも印象が変わるのと同じです。縦のラインか横のラインかというのは、全体的な印象に対して大きな影響を与えるものです。
しゅっとしたいなら縦、やわらかくしたいなら横っていうのはわりと多くの人に共通していえることではないでしょうか。
千木(ちぎ)も縦ラインか横ラインか、で神様の印象だいぶ変わるのは、まさに神は細部に宿るではないかと思うところです。
ビジュアルとして注目すると、千木の切り方ひとつで印象が変わってきますので、神様の性質に応じてこの建築の屋根の印象を帰るとう手法をやりだした昔の人の発想はすごいなと感じました。